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2005年 08月 12日
いま、ヒースロー空港が大変なことになっているようです。
(以下、日経NETの記事より。) 英BA、ヒースロー発が全便欠航に・一部従業員がスト 英ヒースロー空港で11日、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)の一部従業員が、取引先である機内食会社の労使紛争に同調して職場放棄し、同日午後の全便が欠航した。観光シーズンピーク時の騒動に英国の空の玄関は大混乱に陥った。 職場放棄したのは、BAの荷物積み下ろし係や空港内バスの運転手など。同空港発着の120便が欠航し、約2万人に影響が出た。同社は「少なくとも12日午後6時までは全便をキャンセルする」と表明、利用者に旅程変更などを呼びかけている。 BAと地上業務を共通化している豪カンタスやスリランカ航空なども一部の便が運航中止に追い込まれた。 BAなどに機内食を提供しているケータリング会社の従業員数百人が、解雇されたのが発端。これに反発したBA従業員が相次いで仕事を放棄したため、夏の観光客などでにぎわっていた空港は混乱。BAはホテルの手配などに追われた。(ロンドン=野沢正憲) (11:00) 現在、約7万人の人々がヒースロー空港や、その他の国の空港で足止めを食っているそうです。(ちなみに、この「足止めを食う」という状態を表すのに、「座礁する」あるいは「浜に打ち上げられる」という意味のstrandという単語が頻繁に使われています。例:Thousands stranded by air strike – CNN.comの見出しより。) BAの従業員のスト(walk-out)は、彼らの所属するTransport and General Workers Union(TGWU、運輸一般労働組合)の承認を得ずに行った非公式のもので(俗にいう「山猫スト」。英語ではwildcat strikeといいます)、TGWUでは、組合員達に一刻も早く職場に戻るよう説得を続けているとのことです。 さて、この「ケータリング会社」、ゲート・グルメ(Gate Gourmet)といいます。ウェブサイトのLatest Newsを覗いてみると、今回の事件の発端となった従業員解雇について、ゲート・グルメ側の言い分を読むことができて大変興味深いです。 サイトの記事によると、ゲート・グルメ社は現在財務上の問題を抱えているとのこと。(2000年からずっと赤字かつ売上35%減。)その原因の一つが、30年前からほとんど進化していない時代遅れで非効率的な業務の仕組みだそうです。これが足を引っ張って、特にコスト面において、今日の厳しい競争環境に対応できず、大口の契約を失うことにもなったといいます。そこで、将来の生き残りのために、1年半以内に損益分岐点(=収支とんとんの状態)に持っていくことを目標に、さまざまなコスト削減策を導入することとなりました。今回の従業員解雇もその一環として実施されたものでした。 この時代遅れの仕組みや慣行(1970s work practices)は例えばどんなものかというと・・・ 1.半日しか働いていないスタッフがしばしば一日分の賃金をもらっている。 2.作業のピーク時、手の空いているスタッフがいても、他のラインの作業を手伝わない。よって、暇にしているスタッフがいるにもかかわらず、忙しいラインのために追加人員を時間外手当をつけて雇わなければならない。 3.時代遅れの残業手当支給規則により、通常の8時間シフトで働いているスタッフに12.5時間分(つまりやってもいない残業時間に対して)の賃金が支払われている。 (以下省略) オイオイ・・・冗談だろ?!って感じです。代表取締役(Managing Director)いわく、生き残りをかけて “a full day’s work for a full day’s pay”(「一日分の賃金には一日分の仕事を」)の実現を目指す・・・んだそうです。何とレベルの低いスローガンなんだ(笑)。 日本の皆さんは、こんな会社、本当にあるんだろうか?!と思うかもしれませんが、イギリスで暮らしていると非常に思い当たるフシが多々あります。特に2番目の箇所。郵便局で、駅の切符窓口で・・・、どんなに忙しくても、みんな絶対に手伝わないんですね。 与えられた業務(例えば3番窓口を1時間半に一度15分の休憩で担当するとか)の範囲内で手が空いた時間ができたとします。そのときたまたま外の切符の自販機が壊れてしまいお客さんが窓口に殺到した、となっても絶対に見向きもしない。私の最寄駅では、後2,3分で電車が来る・・・と言うときに長蛇の列ができているのに、窓口のガラス越しに、マグカップ片手にのん気に談笑するスタッフの姿が見えることがよくあります。 ひどいときには、窓口で客に応対しているスタッフにも話しかけるため、スタッフの手が止まることもあり、そんなときはこの穏やかな私でも(?!)殺意を抱くことも。このガラス、マジックミラーになっていて、こちらからは中が見えるけど向こうからはこちらが見えないのかしら?!と思ってしまうくらいです。 というわけで、ゲート・グルメの作業場の雰囲気もなんとなく想像つくのでした。 ゲート・グルメのサイトでもう一つ興味を引かれたのはJob opportunities(求人)のページでした。Recruitment(採用)のメニューからOpen positions(募集職種一覧)を見ると・・・ ドイツで中華料理のシェフを募集している以外は、ほとんどがマネージャー職か、人事、財務、会計、IT関連のホワイトカラー。この会社が何が何でもトップダウン式の組織に生まれ変わって今の時代に追いつこうとしている様子が、よ~く分かります。 この中で特に目を引いたのが4番目のCI Change Agentと、5番目のDirector Lean Expertでした。私はある銀行系のシンクタンクの通訳として、一時はつぶれかけたイギリスの会社の再建にかかわっていますが、その会社でもやはりchange agentとlean expertを採用しています。 CIはContinual Improvementの略です。似たような言葉にContinuous Improvementというものもあり、どちらも「継続的改善」と訳され、混乱・誤解を生んでいます。(ちなみに、ISOでは、「継続的改善」といえば前者です。) 英語では両者はきちんと区別されています。前者(continual improvement)は、少しずつ追加し継続的に積み上げていくタイプの改善(incremental change)、後者は少しずつの変化を常に与えていく終りのない改善(gradual never-ending change)を意味します。ちなみに、これにbreakthrough change(突破口的改善)を加え、改善には一般に3種類あると言われています。 Change Agentは日本語でもチェンジ・エージェントと訳されています。”agent”という単語が人に用いられる場合は「代理人」を意味する場合がほとんどですが、この場合は、化学用語の”agent”すなわち「化学的変化を起こさせるもの」という意味も含まれているのではないかと思います。 チェンジ・エージェントは、株式会社アスピというコンサルティング会社のサイトの定義によれば「革新を必要とする組織内にあって、必要な一連の業務を一貫してプランニングし、プロデュースしていく専任の人またはグループ」だそうで、ゲート・グルメのように体制・仕組みを根本的に変革しなければならない会社では不可欠な存在だと思います。 一方、Lean Expert (リーン・エキスパート)は、リーン生産方式の専門家。リーン生産方式については、オンライン百科事典のウィキペディアの定義を参照のこと。要するに、製造工程におけるムダを贅肉に見立て、それら排除し”lean”(無駄な肉のない引き締まった)組織を作ることで、製品および製造工程の全体にわたって、トータルコストを系統的に減らそうとする生産方式です。 ちなみに、”lean”な身体と聞いて私がすぐ思い浮かべるのはブルース・リー。・・・関係ないですね(笑)。 私も2週間の日本滞在ですっかり身体がなまってしまいました。一応ジョギングしようとシューズやウェアは持っていったのですが、イギリスの涼しさに慣れきった体には暑すぎて、日中は外に出ることさえはばかられました。昨日からジム通いを再開し、早速リーン製造(?!)に励んでます。お陰で今朝はひどい筋肉痛でした。 それにしても、このゲート・グルメ以外にも、航空業界にはまだまだ無駄な贅肉で身動き取れなくなっているような会社が五万とあるのでしょうね。そういうところから改善されていけば、航空運賃ももう少し安くなるのかな・・・。バブル崩壊をきっかけに日本の産業界が生まれ変わったように、911のテロ以来の冷え込みで受けた打撃をきっかけに航空業界もスリム化が図られるのでしょうか。 解雇されて路頭に迷う人たちには気の毒ですが、無事次の職が見つかることを祈るのみ。「半日分働いて1日分の給料をくれる」ような会社に就職することは二度とないでしょうが・・・。
by babelbabe
| 2005-08-12 19:37
| 社会・時事
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